いろいろなタイプの多発性骨髄腫

MGUS、くすぶり型とは

Q1.
MGUSやくすぶり型とはどのような病気ですか?
A1.
どちらも、血中もしくは尿中にM蛋白が(くすぶり型では骨髄腫細胞も)増えている状態ですが、一般的な多発性骨髄腫にみられる症状や臓器障害(下表の中の用語の解説※3を参照)はありません

一般的な多発性骨髄腫の患者さんでは、骨髄腫細胞(骨髄の中の形質細胞ががん化したもの)や骨髄腫細胞から作られるM蛋白(役に立たない抗体)が増えるため、様々な症状や臓器障害があらわれるのが特徴です。これに対し、MGUS(エムガス)やくすぶり型の患者さんでは以下のような特徴がみられます。

MGUS

MGUSは、日本語では「意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症」という名称がつけられています(表)。異常な形質細胞から作られるガンマグロブリンという種類の抗体(M蛋白)が少量確認されることから、このように呼ばれています。形質細胞の異常がなぜ起こるのかが解明されていないため、“意義不明”とされています。

表 多発性骨髄腫のタイプと特徴

表の中の用語の解説

※1 MGUSは、M蛋白の種類によって、M蛋白型と軽鎖型(けいさがた)という2つのタイプに大きく分けられます。抗体は、重鎖(ヘビーチェーン)と軽鎖(ライトチェーン)という2つの鎖が結合してできたものですが(下図左)、このうち、軽鎖だけが増えているタイプを軽鎖型と呼びます。



※2 FLC(フリーライトチェーン)検査は、M蛋白の一部であるFLC、すなわち遊離軽鎖(ゆうりけいさ)の量や種類を測定する検査です。細胞の中で抗体が作られる際、通常は軽鎖のほうが多く作られますので、重鎖と結合できなかった軽鎖は細胞の外へ放出され、遊離軽鎖あるいはFLCと呼ばれるようになります(上図右)。血液検査では、FLC-κ(カッパ)、FLC-λ(ラムダ)という項目がFLC検査にあたります。正常な形質細胞はκとλが均等に出てくるのですが、骨髄腫細胞ではどちらかに偏って出てくるため、κとλのどちらか一方が増えてしまい、κとλの比はとても大きな数字になるか、とても小さな数字になります。現在、κとλのどちらが多いのかが、病気の悪性度や治療法に影響することはないと考えられています。

※3 臓器障害とは、以下(CRAB)のうち、1つ以上がみられることです。
C:高カルシウム血症  R:腎障害  A:貧血  B:骨の病変

※4 バイオマーカーとは、ある特定の病気の有無や状態を示す目安となるもので、多発性骨髄腫の場合、以下のような異常がみられます:①骨髄中の骨髄腫細胞の割合が60%以上、②M蛋白成分のFLC※2とM蛋白成分以外のFLCの比が100以上、③画像検査(MRI)で局所性の骨病変が2個以上

※5 通常、多発性骨髄腫では血中あるいは尿中にM蛋白が増加しますが、非分泌型の多発性骨髄腫のように、M蛋白が増加していないタイプもあります。(Q5参照)

血液中にM蛋白がみられた場合、骨髄の検査を行います。検査の結果、骨髄の中に骨髄腫細胞が10%未満であればMGUSと診断されます。骨髄腫細胞の割合(%)は、同じ患者さんでも、どの部分の骨髄液を採ったかによって若干違いますが、いずれにせよ、骨髄腫細胞の骨髄中の割合が診断には重要です。MGUSでは症状や臓器障害はみられず、治療は行いません。MGUSと診断された患者さんには、この病気について、“正常ではないが、悪い病気(がん)ではないこと”、“定期的に検査を行って多発性骨髄腫に移行していないかどうかを確認する必要があること”、そして“過剰に心配する必要はないこと”などをお話ししています。

くすぶり型

くすぶり型はM蛋白だけでなく骨髄中の骨髄腫細胞もMGUSと比べて増えていますが、MGUSと同じく症状や臓器障害はなく、一般に治療は行われません(表)。以前は、症状がなければ、骨髄腫細胞が何%に増えていようともくすぶり型と見なされていました。しかし最近の研究によって、症状がなくても骨髄腫細胞が60%以上に増えている患者さんでは、いずれ多発性骨髄腫に移行する危険性が高いことがわかり、現在では、症状がなく、骨髄腫細胞が10~60%であればくすぶり型、60%以上の患者さんは症状がなくても多発性骨髄腫として分類され、後者では治療を行う必要があると考えられています。

このように考え方が変わってきた背景には、治療法の進歩もあります。多発性骨髄腫は高齢者に多く、以前の抗がん剤治療では副作用により体調が悪くなることも考えられましたので、“症状がなければ治療を開始する必要はない”とされていました。しかし最近、副作用を考慮したお薬が登場したことから、“症状がなくても骨髄腫細胞が60%以上であれば、早めに治療を開始すべきである”という考え方に変わってきました1)。ただし、60%という数字はあくまでも統計的に出されたもので、例えば骨髄腫細胞が50%で、症状がなければ治療は絶対に行わないというわけではありません。治療を行うかどうかは、PET-CT(ペット・シーティー)など、他の検査結果も考慮しながら、個々の患者さんごとに主治医が判断しています。


<引用文献>

1) Rajkumar SV, et al., Lancet Oncol, 2014; 15: e538–48